岡山大学 組織機能修復学分野

論文(Fujisawa et al, Stem Cell Research & Therapy, 2022)が受理されました!ヒト多能性幹細胞由来MKX-tdTomatoレポーター系の確立 ― 腱組織(Tendon)誘導研究の新ツール

MKXのtdTomatoレポーターhESCの樹立論文。中国からの留学生のミンさんと藤澤君(M1)ががんばってくれました。おめでとうございます。掲載料が円安で高すぎる。。

Yuki Fujisawa, Lu Ming, Daisuke Yamada, Tomoka Takao, Takeshi Takarada (corresponding author). (2022) Establishment of a human pluripotent stem cell-derived MKX-tdTomato reporter system. Stem Cell Research & Therapy, 13(1): 515. doi: 10.1186/s13287-022-03203-5.
https://stemcellres.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13287-022-03203-5

腱(tendon)は、筋肉と骨をつなぐ重要な結合組織ですが、損傷後の自然修復能力が極めて低く、再生医療の対象として注目されています。本研究では、ヒト多能性幹細胞(hPS細胞)を用いて、腱分化の主要転写因子であるMKX(Mohawk)の発現を可視化できるMKX-tdTomatoレポーター細胞株を構築し、腱細胞誘導の進行をリアルタイムで追跡可能とする技術を確立しました。

このレポーター系は、CRISPR/Cas9システムによってMKX遺伝子座にtdTomato蛍光タンパク質をノックインすることで作製され、MKXの転写活性と同期して赤色蛍光を発します。さらに、キセノフリー条件下での段階的分化誘導により、hPS細胞から傍軸中胚葉、ソマイト、SCL領域を経て、MKX陽性の腱前駆細胞(tendon progenitor cells; TPCs)を高効率に誘導できることを確認しました。

得られたMKX-tdTomato陽性細胞は、SCX、TNMD、COL1A1などの腱特異的マーカーを強く発現し、形態的にもテノサイト様の線維状形態を示しました。この系は、腱発生メカニズムの解析、疾患モデル化、再生医療や創薬スクリーニングに幅広く応用できる“見える化された腱誘導プラットフォーム”として機能します。