以下の論文が受理されました(祝 通算100報目)。
山田さん、ご協力いただいた先生方、大変ありがとうございました。
岡山に着任して始めた仕事で、ようやく日の目を見ることが出来ました。
研究内容の説明などは、以下のプレスリリースをご覧ください。
岡大HP:https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id866.html
AMED HP:https://www.amed.go.jp/news/release_20210810.html
前任の金沢大のときに骨・軟骨の前駆段階で発現するPrrx1を可視化するマウス(Prrx1-GFP transgenic マウス)を触っていたわけですが(Takarada et al, Development, 2016)、その頃から、この光ってる細胞(Prrx1陽性細胞)を自身でヒト多能性幹細胞(ES細胞やiPS細胞)から作ってみたいと漠然と考えていました。
今回開発した細胞源は、軟骨再生や骨系統遺伝性疾患患者由来iPS細胞を使用した疾患モデリングに有用ですので、この細胞源を使用して新しい医療の創出に貢献できる仕事を引き続き進めていければと考えます。また、この細胞源は四肢(両手両足)の基となるものなので、この細胞から自分たちのヒトの手足ができているのか・・・と考えると色々と夢が膨らみます。
Daisuke Yamada, Masahiro Nakamura, Tomoka Takao, Shota Takihira, Aki Yoshida, Shunsuke Kawai, Akihiro Miura, Lu Ming, Hiroyuki Yoshitomi, Mai Gozu, Kumi Okamoto, Hironori Hojo, Naoyuki Kusaka, Ryosuke Iwai, Eiji Nakata, Toshifumi Ozaki, Junya Toguchida, Takeshi Takarada (corresponding author). Induction and expansion of human PRRX1+ limb-bud-like mesenchymal cells from pluripotent stem cells. Nature Biomedical Engineering, 2021, 5, 926-940. doi: 10.1038/s41551-021-00778-x.
関節軟骨や四肢骨の形成に関わる肢芽(limb bud)間葉系細胞は、発生学的に**外側中胚葉(lateral plate mesoderm)に由来し、再生医療における理想的な軟骨前駆細胞と考えられています。本研究では、ヒト多能性幹細胞(hPS細胞)から発生段階に対応した肢芽様間葉系細胞(limb-bud-like mesenchymal cells; LBM)を定義的に誘導し、さらに拡張培養・凍結保存が可能な細胞集団(ExpLBM)**として確立するプロトコールを開発しました(Yamada et al., Nature Biomedical Engineering, 2021)。
まず、PRRX1遺伝子にtdTomatoをノックインしたレポーター細胞株を用い、発生における中胚葉分岐を再現する段階的誘導法を構築しました。WNTシグナルの活性化とBMP/TGF-β/HHシグナルの抑制により、PRRX1陽性の肢芽様間葉系細胞を効率よく誘導できることを確認しました。得られたExpLBM細胞は、**安定した増殖能(倍加時間約2〜3日)**を維持しつつ、10継代以上にわたって形態・遺伝子発現を保持し、凍結保存後も軟骨分化能を失わないことが示されました。
さらに、CD抗原解析により、**CD90<sup>high</sup>・CD140B<sup>high</sup>・CD82<sup>low</sup>**の表面抗原プロファイルが高い軟骨分化能を示すExpLBM細胞の指標であることを発見しました。このマーカーを用いることで、誘導過程の品質評価と分化能の予測が可能となり、製造過程の再現性と均一性の担保が実現しました。
3次元培養では、ExpLBM細胞から均一な硝子軟骨様組織(Safranin O・COL2陽性)が形成され、免疫不全動物への移植後も異形成を起こすことなく安定した生着を示しました。さらに、COL2A1変異を有する患者由来iPS細胞を用いた疾患モデルでは、ExpLBMを介してⅡ型コラーゲン異常症(COL2pathy)の表現型再現と薬剤スクリーニング系の構築が可能であることを示しました。
本研究により、ヒトiPS細胞から発生学的に定義された軟骨前駆細胞を安定供給できる再生医療・創薬応用の共通プラットフォームが確立されました。
								
								