以下の論文が受理されました。
三浦さん、大変お疲れさまでした。
豊岡先生、このようなご縁をいただき大変ありがとうございました。
現状のがん研究では、がん細胞由来細胞株を使用した平面あるいは三次元培養モデル、あるいはそれらの免疫不全動物移植での研究が主ですが、継代を繰り返した細胞を使用しているため、生体内がん病態のどの点が再現できているか不確実な点もあります。
私たちは、薬剤(=ドキシサイクリン、DOX)依存的にHER2を過剰発現させるシステムをゲノム編集によりヒト多能性幹細胞(iPS細胞)に導入しました。同細胞より肺オルガノイドを作製させ、その後DOXを添加することで、人為的に前がん病変(異常増殖、過形成)を持ったヒト肺組織を作製することに成功しました。
ヒト多能性幹細胞から肺オルガノイドは大量に作製することが可能であるため、本実験系は、HER2強陽性肺がん病態の創薬スクリーニングに有用な技術であるとかんがえられます。オルガノイドを使用しているため、平面培養では見られない生体に類似したレスポンスの取得が可能ですし、特に、従来のがん組織を取り出した研究では不可能だった、がん発生の超早期過程や、前がん病態研究が可能となりました。
今後は、前がん状態からの多段階発がん過程の再現を目指した研究や、樹立したiPS細胞株をつかって乳腺オルガノイドからの乳がんの再現研究に取り組めればとかんがえています。ご協力いただいた先生方、大変ありがとうございました。
Akihiro Miura, Daisuke Yamada, Masahiro Nakamura, Shuta Tomida, Dai Shimizu, Yan Jiang, Tomoka Takao, Hiromasa Yamamoto, Ken Suzawa, Kazuhiko Shien, Masaomi Yamane, Masakiyo Sakaguchi, Shinichi Toyooka#, Takeshi Takarada# (#corresponding author) (2021) Oncogenic potential of human pluripotent stem cell-derived lung organoids with HER2 overexpression. International Journal of Cancer, in press.