岡山大学 組織機能修復学分野

論文(Takihira et al, npj Reg Med, 2025)が掲載されました!iPS細胞由来の人工軟骨で関節軟骨損傷を修復 ― ミニブタモデルでの成功

Shota Takihira, Tomoka Takao, Yuki Fujisawa, Daisuke Yamada, Shojiro Hanaki, Tomohiro Inoue, Shigeo Otake, Aki Yoshida, Kazuki Yamada, Shinichi Miyazawa, Eiji Nakata, Toshifumi Ozaki, Takeshi Takarada (corresponding author). Bioengineered chondrocyte-products from human induced pluripotent stem cells are useful for repairing articular cartilage injury in minipig model. npj Regenerative Medicine, 2025, 10: 31. doi: 10.1038/s41536-025-00420-3.

関節軟骨は血管を持たず、自己修復がほとんどできないため、一度損傷すると変形性関節症へ進行しやすいことが知られています。
宝田研究室では、ヒトiPS細胞から誘導した肢芽様間葉系細胞(ExpLBM)を起点として、粒状および板状の軟骨組織を作製し、それらをミニブタ関節軟骨損傷モデルに移植して修復効果を検証しました。作製した軟骨組織はいずれも軟骨マトリックス成分(コラーゲンII、アグリカン、SOX9など)を豊富に含み、Safranin O染色で明瞭な軟骨様構造を示しました。
移植後、これらの人工軟骨は欠損部位に良好に定着し、周囲組織と滑らかに融合して新たな軟骨層を形成しました。
また、粒状軟骨・板状軟骨のいずれを用いた場合も修復成績に大きな差はなく、異なる形態でも同等の再生効果を示すことが確認されました。さらに、この技術はヒトiPS細胞を原料とするため、大量生産や凍結保存による在庫化が可能であり、臨床応用を見据えた“オフ・ザ・シェルフ型”再生医療製品としての展開が期待されます。