岡山大学 組織機能修復学分野

論文(Takao et al, Stem Cell Research & Therapy, 2023)が受理されました!ヒトiPS細胞由来ExpLBMから軟骨細胞シートを作製 ― 関節再生の新しい細胞源

東海大学整形外科の佐藤正人先生らとの共同研究成果です。当研究室で開発したヒト iPS 細胞から誘導した四肢軟骨細胞の基になる拡大培養可能な肢芽間葉系細胞(ExpLBM)を用いて新規軟骨細胞シートの作製に成功しました。この結果から、ExpLBM が組織工学的加工の可能な細胞であることを示すことが出来ました。将来的にこの ExpLBM 由来軟骨細胞シートが臨床応用できることを期待しています。最初は、結果が安定せず大変でしたが、何とか安定する実験系がつくれてよかったですね、髙尾先生おつかれさまです!

Tomoka Takao, Masato Sato, Yuki Fujisawa, Eriko Toyoda, Daisuke Yamada, Yukio Hitsumoto, Eiji Nakata, Toshifumi Ozaki, Takeshi Takarada. (2023) A novel chondrocyte sheet fabrication using human-induced pluripotent stem cell-derived expandable limb-bud mesenchymal cells. Stem Cell Research & Therapy, 14(1): 34. doi: 10.1186/s13287-023-03252-4.
https://stemcellres.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13287-023-03252-4

岡山大学プレスリリース
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r4/press20230317-6.pdf

関節軟骨の再生医療では、移植可能な軟骨細胞シートが注目されていますが、臨床応用には高品質な軟骨細胞を安定的に大量供給する技術が必要です。本研究では、ヒトiPS細胞から誘導した**拡張可能な肢芽様間葉系細胞(ExpLBM)**を用い、培養条件を最適化することで、高純度かつ柔軟な軟骨細胞シートの作製に成功しました。

ExpLBM細胞を二次元培養で軟骨前駆細胞へと分化誘導した後、温度応答性培養皿上で細胞シートを形成しました。得られたシートはSafranin O陽性、COL2およびACAN陽性、COL1およびRUNX2陰性を示し、成熟したヒアル型軟骨に類似した性状を持っていました。さらに、免疫不全ラットの関節軟骨欠損モデルに移植したところ、シートは欠損部に良好に生着し、ヒトビメンチン、Ⅱ型コラーゲン、アグリカンが強く発現しました。これにより、iPS細胞由来軟骨細胞シートが実際に関節修復を促進することが実証されました。

この技術は、従来の自家軟骨細胞移植の課題であるドナー部位侵襲や採取量制限を克服し、オフ・ザ・シェルフ型の関節再生治療へつながる可能性を示しています。