Shota Takihira, Daisuke Yamada, Tatsunori Osone, Tomoka Takao, Masakiyo Sakaguchi, Michiyuki Hakozaki, Takuto Itano, Eiji Nakata, Tomohiro Fujiwara, Toshiyuki Kunisada, Toshifumi Ozaki, Takeshi Takarada (corresponding author). PRRX1-TOP2A interaction is a malignancy-promoting factor in human malignant peripheral nerve sheath tumors. British Journal of Cancer, 2024, 130(9):1493-1504. doi: 10.1038/s41416-024-02632-8.
悪性末梢神経鞘腫(MPNST: Malignant Peripheral Nerve Sheath Tumor)は、神経線維腫症1型(NF1)患者などに発生する難治性の軟部肉腫です。その発生・進展メカニズムの多くは未解明のままであり、新たな分子標的の探索が求められてきました。本研究では、転写因子PRRX1がMPNSTの悪性化に深く関与することを明らかにし、その作用がDNAトポイソメラーゼIIα(TOP2A)との直接的な相互作用によって媒介されることを突き止めました。
臨床サンプル解析により、PRRX1の高発現はMPNST患者の予後不良および転移リスクの増大と強く相関していました。
細胞およびマウスモデルでの機能解析では、PRRX1を抑制すると腫瘍細胞の増殖・浸潤・腫瘍形成能が顕著に低下することが確認されました。さらに、質量分析および構造解析から、PRRX1がTOP2Aと直接結合し、がん細胞のDNA動態や転写活性化を促進する複合体を形成することを発見しました。
TOP2A阻害薬(エトポシド)を投与するとこの相互作用が抑制され、腫瘍増殖も同時に抑えられることが示されました。
これらの結果は、PRRX1–TOP2A経路がMPNSTをはじめとする多くのがん種に共通する新しい悪性化ドライバーであることを示唆します。今後、この相互作用を標的とした分子治療の開発が期待されます。