岡山大学 組織機能修復学分野

論文(Kitaguchi et al, Biomed Mater, 2025)掲載されました! iPS細胞から“形を持つ軟骨”へ ― 耳・鼻形状にも対応する新しい再生医療のかたち

Kitaguchi, Y., Ota, T., Takao, T., Iwai, R., Moriwaki, T., Fujisawa, Y., Yamada, D., and Takarada, T. (2025). Evaluation and processing of physical properties of anti-calcified glutaraldehyde-treated three-dimensional cultured cartilage tissues. Biomed. Mater. 20, 045005.

形成外科所属の北口先生のfirst author 論文です。

iPS細胞から“形を持つ軟骨”へ ― 耳・鼻形状にも対応する新しい再生医療のかたち

軟骨は、ケガや病気で一度失われると自然には再生しにくい組織です。特に耳や鼻のように形が重要な軟骨を修復するには、従来の人工材料や自家移植だけでは限界がありました。
私たちは、ヒトiPS細胞から誘導した「肢芽様間葉系細胞(ExpLBM)」を用いて、スキャフォールド(足場)なしで三次元軟骨組織を作製する技術を開発しています。

本研究では、このiPS由来軟骨組織をグルタルアルデヒド固定処理し、さらにエタノール洗浄を組み合わせることで、軟骨本来の強度を保ちながら石灰化を抑える新しい方法を確立しました。
この処理によって、耳や鼻など複雑な形にも加工できる柔軟性を維持しつつ、長期保存が可能な軟骨組織の作製が実現しつつあります。

今後は、これらの技術を応用して「患者ごとに形をデザインできる軟骨」の実現を目指します。
人工材料でも生体でもない――iPS細胞から“形を持つ軟骨”をつくる。そんな未来の再生医療が、少しずつ現実になり始めています。