iPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いた研究において、LBM(肢芽間葉系細胞)から骨への分化過程における分子メカニズムを解明することを目指しています。ヒトの骨格形成において、分岐点やシグナルの時間的・空間的な調和がどのようにして細胞内変化を引き起こすのか、その理解を深めることが本研究の根幹です。そのためにデータサイエンス、特にマルチオミクス解析を用いて研究を行っています。
研究の焦点
- 分化に関与する遺伝子の同定と制御メカニズム
iPS細胞からLBM、そしてLBMから軟骨細胞への分化において、分化に関与する遺伝子の同定とその発現制御メカニズムを明らかにしています。遺伝子の転写はクロマチンの解けた構造に依存しており、ヒストンの化学修飾が転写活性度を制御します。これらのプロセスを通じて、分化における遺伝子発現の変動メカニズムを解析しています。 - マルチオミクス解析による総合的アプローチ
bulkRNA-Seq、ATAC-Seq、ChIP-Seq、CUT&Tagなどのマルチオミクス手法を駆使し、異なる視点から得られたデータを統合的に解析しています。これにより、従来知られていなかった生命現象や解析が難しかったメカニズムにアクセスし、分子レベルでの理解を深めています。
バイオインフォマティクスとスーパーコンピュータの活用
研究で得られた大量のデータは、生命情報学(バイオインフォマティクス)的手法を用いて処理します。そのためのスーパーコンピュータを活用した独自の処理ツールや解析ツールを作成したり、新たな解析アルゴリズムを開発したりしています。それにより、生命現象を包括的かつ迅速に解析し、新たな知見を得ています。
医療への応用
ヒト骨格形成の分子メカニズムを解き明かすことで、将来的な医療への応用を目指しています。これにより、先端の治療法や再生医療の発展に寄与し、様々な疾患に対する新たな治療戦略の開発に繋げたいと考えています。